「節」といえば、鰹節のことばかりを思い浮かべてしまいますが、実は節は他にもたくさんあるのをご存知ですか?それぞれ特徴的な味わいがあって魅力あふれています。
上手に使い分けることができるとおだしの楽しさも広がる。そんな節をシリーズに分けてご紹介していこうと思います。
煮熟して燻すと節になる
鰹節は、鰹を熱湯で茹であ後に、煙で燻して水分を脱いていったものが鰹節(荒節)と呼ばれます。
また、そこからさらに麹菌の一種の優良カビをつけて熟成し、さらに水分と脂分を抜いて独特の芳香がついたものが本枯節と呼ばれます。どちらも鰹節と呼ばれるものです。
そもそもなぜ節と呼ぶかというと、煙でいぶして作られることから「かつおいぶし」が転じて「かつおぶし」と呼ばれるようになったのではないかと言われています。
また、松の節の様に堅くて色が赤い為、「一節、二節」という風に「節」で数えられていました。製法の「いぶし」と合わさって「鰹節」の呼び名が定着したと言われています。
さて、そうなると、鰹だけでなく他の魚でも節は作れるということになり、実際に節は様々な魚で作られています。
あまりスーパーなどでは単体で見かけることは少ないですが、実はだしパックにブレンドされていたり、お蕎麦屋さんやうどん屋さんなどでは多用されていてそれらをブレンドすることでお店ならではのおだしの味わいとオリジナリティを作っています。
ですから、あまり見かけることはなかったとしても、実はみなさんもよく口にしているおだしなんです。
そんな鰹節以外の節は「雑節」と総称されています。決して作り方は雑ではないので、雑と呼ぶことに違和感を感じる生産者も多くいます。
よくあるのが、マグロ節、鯖節、宗田かつお節、うるめ節、ムロアジ節などです。変わったところではサメ節や山女魚節、ウツボ節、サワラ節など、魚であればどんなものでも節になってしまいます。
最近では地域で獲れる変わった魚を名物にしようと新しい節を開発している生産者も少なくありません。変わったところでは、鶏肉や鹿肉など肉類からも節を作っているところもあります。
うま味や香り、コク、雑味などが多種多様
では雑節の魅力はどんなところにあるでしょうか。
それはズバリ、鰹節にはないそれぞれの魚の特徴からくる独自の世界観。
例えば鯖節はうま味が強く酸味はありません。しかし、鯖特有の魚感があります。ムロアジ節は独特の甘味とコクがあります。宗田カツオ節は独特の雑味があります。単体ではちょっとクセが強かったり特徴的すぎたりするので、ブレンドして使うのが一般的です。
写真左から、ウルメ節、鯖節、宗田かつお節、マグロ節、鰹節(荒節)、鰹節(本枯節)
雑節はちょっと小さめなものが多いですが、一般的に食用として出回る大きさの規格外だったり、脂がのっていなかったりするものが原料になるのでこういった感じになっています。
たしかに人間でも背の大きい人、小さいひと、子供から大人までさまざまですよね。魚だって同じように漁でとられた魚は同じ種類でも多種多様にいます。
いつも同じ大きさで食べている切り身の大きさだけが泳いでいるわけではありません。だから、食用の規格に合わないものは別に活用するということで、せっかくの魚の命を無駄にしないという、とても素晴らしい存在でもあるのです。
全国各地で生産されていますが、一番多く作られている地域は熊本県の天草地方。雑節日本一として発信を初めています。
雑節でどの雑節がよく使われるかというのには地域性もあり、たとえばムロアジ節は静岡や愛知など一部の地域でしか使われません。名古屋のきしめんのおだしはムロアジ節なくしては語れません。また、関西のうどんにはウルメ節が欠かせません。あの独特のおだしの味わいは鰹節だけでは出ないのです。
さて、次回から、一つ一つの節にスポットを当てて、その魅力をご紹介していきたいと思いますので、ご期待ください。
著者プロフィール
山根正充末期ガンの父の看病の際に、おだしを飲んでもらって「おいしい、おいしい」と喜んでもらえたことに感銘を受け、その魅力に開眼。おだしはクオリティーオブライフを向上させることを実感。たくさんの人のその素晴らしさを伝えることを人生のミッションに活動を開始。イベント、ワークショップ、執筆など独自の視点で企画し活動している。「だしと発酵、暮らしとデザイン」主宰。だしソムリエ協会認定講師。発酵マイスター。食品表示診断士。本業はグラフィックデザイナーでもある。東京都在住。二児の父。
だしと発酵、暮らしとデザイン