その国の食文化を反映しているだし。周囲を海に囲まれている日本では魚介類が多く使用されていますが、海外ではどんな素材が使われているのでしょうか。
すべての西洋料理のルーツだと言われるイタリアから見てみましょう。
イタリアのだし
日本のだしに相当するイタリアの「ブロード(brodo)」。日本ではブイヨン、ブロスと呼ばれています。
根菜類を中心とした野菜のブロードに加え、野菜に鶏や牛を合わせた肉のブロードがあり、リゾットやスープなどに活用されています。
フランスのだし
フランスの「だし」に相当するものとして、「フォン」と「ブイヨン」が挙げられます。
フォンはさまざまなソースのベースとして使われています。素材は仔牛や鹿、仔羊などの骨と肉、魚、野菜などバラエティ豊か。
ブイヨンは、丸鶏や牛すね肉に根菜を合わせてそのまま煮出します。フォンとの違いは肉類に骨が入らないこと。
材料を煮て柔らかくなったら食べるのがポトフ、このときの汁がブイヨンです。
ブイヨンに牛すね肉や根菜、卵白などを加えさらに煮出したものがコンソメ。どんどん足しうま味が凝縮するのが大きな特徴です。
(※クールブイヨンと呼ばれる短時間でとるだしもありますが、ソースやベースに用いることはなく、癖のある素材を茹でてアクや臭みを抜くための出汁もあります。)
日本のだしは沸騰しすぐに火をとめますが、フォンは大量の材料と膨大な時間をかけて煮出したものです。
また、日本のだしはだしを取る前の段階(かつお節づくり、昆布づくり)に時間をかけますが、フランスのフォンは新鮮な材料であることが重要です。
また、日本のだしは1時間もすれば味が劣化するのに比べ、長時間かけて煮出したフォンやブイヨンは1〜2週間保存が可能です。
中国料理のだし
中国料理の出汁は「湯(タン)」と呼ばれ、フレンチと同じように長い時間をかけて材料を煮ていきます。
湯(タン)は材料によって大きく分けると2種類、清濁による分類が2種類あります。
材料による違いのうちのひとつ、「葷湯(フンタン)」は動物性、魚介類の湯で、鶏や豚の骨や肉、干貝は干アワビ、干エビが原料です。
一方、「素湯(スゥタン)」は植物性主体でしいたけや豆もやし、野菜の素材です。
清濁による分類は、澄んだスープの清湯(チンタン)、濁っているのが「白湯(パイタン)」です。
干物などの加工品が材料になるところは日本と近いのではないでしょうか。