都内屈指のおしゃれで人気のエリア、東京・恵比寿。美味しいお店が軒を連ねるエリアに「真鯛らぁめん まちかど」はある。
店主の荒木宇文さんは、元イタリアンのシェフ。本場イタリアの一つ星レストラン「I portichi(イ・ポルティチ)」や「Cà Matilde(カ・マティルデ)」で修行を積んだ本格派だ。帰国後も中目黒のイタリアンレストランでシェフを務めた後独立、駒沢でイタリアンの店をオープンさせた。
イタリアンのシェフが日本の国民食ラーメンを作ってできたのは、世界中どこにもない”自分だけの武器”。
意外な転身のきっかけは、夜のメニューとして人気だった濃厚な魚ソースのパスタ。魚のうま味を凝縮させたそのパスタを食べた常連客からヒントが試金石となった。
当初、夜のメニューとして1日2食限定で提供するようにしていたが、評判が評判を呼び、鯛ラーメン店として営業する日が次第に増えていった。そして、イタリアンの看板をラーメンののれんに変えたのは2019年1月のことだった。
「もともとイタリアンだけでやっていくつもりはありませんでした。また海外へもチャレンジしたいんです。」と語る荒木さん。日本の食文化を理解し、イタリアで修行したからこそ作ることができた、新ジャンルのラーメンだ。
調味料不使用、真鯛から出る油のみを使用した鯛づくしの濃厚スープ
ラーメン店ではなく本場イタリアで修行した「真鯛らぁめん まちかど」のラーメンは、麺もスープも他の鯛ラーメンとは一線を画している。
ラーメンらしさを感じさせるのは、力強い濃厚な鯛スープだろう。
「真鯛らぁめん まちかど」のスープの材料は水と野菜と鯛のみ、動物性の油や材料は一切使わない。
仕込みは15kgの鯛の下処理から始まる。宇和島産の真鯛のアラを頭と顎部分に切り分け、流水で血合いや内蔵をきれいに取り除く。この工程を疎かにすると臭みが残ってしまうため、1時間ほどかけて丁寧に行っていく。
下処理した真鯛のアラを煮込む過程だが、ここでイタリアンシェフの技が光る。
鯛のアラを煎って鍋底に焦げ付かせていくことで、ほどよい雑味と力強い味わいが加わる。この鯛スープに野菜類とパスタを入れ、合計5時間ほどかけて濃厚なスープが出来上がる。
麺にもイタリアン出身ならではのこだわりが生きている。一般的な中華麺には”かんすい”と呼ばれる、独特の食感や喉ごし、色味を加える成分が入っているが、「真鯛らぁめん まちかど」の麺にはかんすいを使用していない。その代わり、精製の粗いイタリアのセモリナ粉を使用し麺に腰を出し、オリーブオイルを加えている特注麺だ。
超濃厚なのにあっさりした鯛スープ。時間とともに変化する鯛の切り身と、自家製ホットオリーブオイルに注目
ラーメンに盛り付けられているのは、真鯛の切り身、季節の青菜、セロリ、レモン。
盛り付けられた鯛の切り身は、食べる過程で刺身からしゃぶしゃぶ、煮付けと変化していくのもユニークだ。
スープは白濁していてとろみがあり、深いコクと鯛のうま味が凝縮されている。鯛がそのまま液体になったような濃厚さだが、味わいはスッキリと上品で、全部飲み干せるほどあっさりとしている。
添えられているレモンも味に変化を加えてくれるが、注目はテーブルに備え付けの「ホットオリーブオイル」だ。ローリエににんにく、唐辛子を加えて作られた自家製オイルだ。
鯛ラーメンにホットオリーブオイルを入れると、味により一層深みと独特の風味が増す。ホットオリーブオイルだけでも美味しいが、オリーブをそのまま食べても、ラーメンに入れても美味しい。今後販売予定だとか。
いまや世界中で人気の、日本の国民食”ラーメン”。味噌でも豚骨でもなく、宗教に関係なく食べられる白身魚で作ったラーメンが世界を席巻する日も近そうだ。今のうちにぜひお試しあれ。
店舗情報
真鯛らぁめんまちかど
アクセス:恵比寿駅西口から徒歩3分
営業時間:月~土 11:30~17:00(ラストオーダー16:30)
定休日:日曜日
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-3-9 田中ビル 2F